「知らんけど」という、関西弁に由来する言葉が若者たちの間で広く使われている。なぜ、関西弁なのか。なぜ、「知らんけど」なのか。日本語学が専門の田中ゆかり・日本大学教授は、正論を言うことの気恥ずかしさと、「方言コスプレ」の時代の合わせ技とみる。
――「知らんけど」という言葉が、若い世代の間で使われているそうです。
「学生たちも使っていますよ。だから、私は『知らんのかい』とボソッとつっこんでいます」
「コンフリクトの防波堤として、『それほど本気あるいは真剣ではないよコスプレ』ツールとして便利なのでしょう」
――先生が教えているのは、都内の大学です。なぜ関西弁、あるいは、方言発の言葉が取り入れられているのでしょうか。
「まず、災害支援の応援メッセージが当地の方言で発せられることにより、より心に響くものとして世の中に受け止められるようになったというところから、お話ししましょう。1995年の阪神淡路大震災で、被災地の神戸を応援するメッセージは何だったか覚えていますか?」
――「がんばろう神戸」でした。
「はい。『がんばろう』は共通語ですね。それが2011年の東日本大震災では、『がんばっぺ○○』のような、その土地の言葉に土地の名称をいれた『当地の方言+地名』という構成の応援メッセージが使われるようになりました。では、16年の熊本地震では……」
――「がまだせ熊本」でしたね。
「方言」に何が起きたのか。田中さんの分析は、戦前・戦後以来の言葉の流れまでさかのぼります。
「熊本弁で『がんばれ』とい…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル